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11月2日 地方対話(後半)報告

 「地方対話」の後半部では、「都市の発展の機会と挑戦」をテーマとして、参加者が入れ替わり、パネリストとして日本側から齋藤彰氏(舞鶴市長)、増田寛也氏、山田啓二氏、松本盛雄氏(在瀋陽日本国総領事)、中国側から陳昊蘇氏(中国人民対外友好協会会長)、周漢民氏(上海万国博覧会執行委員会副主任
上海市政治協商会議副主席、民主建国中央委員会副主席)、孫尭氏(黒竜江省人民政府副省)が出席しました。基調報告を行ったのは、森民夫氏(全国市長会会長、長岡市長)、陶斯亮氏(中国市長協会専任副会長)、司会を務めたのは日本側は香山充弘氏、中国側は陳永明氏(上海師範大学教育学院院長)でした。


 まず日本側の基調報告から後半の分科会は始まりました。森民夫氏は、新潟中越地震で被災した長岡市が、「住民の意欲の再生」を目指して生活再建を行った経験を語りました。そして、「四川大震災を機に、四川省との交流が始まり、長岡市民は交流を通じて元気になっていると感じる」と述べました。そして、「都市が元気であるためには、『交流』と『市民自身の創意工夫』の2つがポイント」であり、特に「市民が自ら元気になる力をどう引き出すかが行政の力だと思う」と語りました。

 中国側の基調報告者である陶斯亮氏は、森氏が強調する「交流」について、「中日の姉妹都市は200を越え、地方都市間の交流は、政の冷・熱に左右されない、中日関係の楚となる強固な関係になっているのではないか」と応じました。また、後半の分科会のテーマである「都市の発展」にも触れ、中国の「環渤海地域などの都市化による潜在的成長力の高さに注目すべきだ」としながらも、「都市化の発展に関する考え方は変わりつつあり、工業化が完全に終わっていない地域では、環境意識が高まっている」と注意を促しました。そして、環境意識の高まりに伴い、行政も経済
成長と環境の両立のために「都市をどう管理するかを重視するようになってきた」と指摘しました。

 この発言を受けて陳昊蘇氏は、「都市間の交流は点と点の交流だが、一連の都市、数が増えれば面になり、より積極的な役割が生まれるだろう」と述べ、「環境などで協力し、都市間交流のプラットフォームをつくっていきたい」と語りました。

 これに対し増田寛也氏は、「プラットフォームづくりは極めて重要なことだ」と賛同しました。また、度々話題となった「都市化」について触れ、「都市化とは、人口膨張によって都市の外へエネルギーが向かうことである。しかし中国はこれから高齢化の進展に直面し、都市は空洞化して、逆に内にエネルギーを向けていくことが必要になる。しかし、外側に張り巡らせていたインフラを内部に移していくことは、周辺部のインフラから撤退するという大きな課題に直面することを意味」し、「街の構造ががらっと変わることの難しさをいたるところで感じている」と述べました。
 そして青森が、高齢者を中心部に集めて、できるだけコンパクトに街を再構成することに成功したという例を紹介しました。また、「都市は経済の裏打ちがあって成り立つもの」であるから、「都市の中に消費者がいない場合、会社は消費者を求めて外に向かうことになる」と述べ、中小企業も消費者を求め、経済的には外に向かって新たなビジネスチャンスを持ちたいと考えている会社は多い」と指摘しました。そして、規模の大きくない企業が外に目を向けている時に、チャンスを実現させるために手を貸すことが地方政府の大事な役割ではないか、と問題を提起しました。

 来年に上海万博を控え、周漢民氏は「日本の万博の経験から中国は示唆を得て、万博を成功させたい」と述べました。それに対し、司会の香山氏は「日本側としてもできるだけ協力したい」と応じました。

 山田啓二氏は都道府県の立場から、後半の分科会のテーマ「都市の発展の機会と挑戦」を取り上げ、「都市には都市の管理という観点から、都市としての個性をどう活かすか、が問題になる。」と述べました。そして京都を例にとり、文化や環境との調和を図りながら、都市の発展を抑制する方向に京都は向かっている」と説明し、具体例として、景観への配慮、環境への配慮を重視していることを説明しました。

 孫尭氏は、黒竜江省の資源、観光資源の潜在力について説明しました。

 また、香山氏から、「国レベルのエキスパートとして地方をどう見ているか」と問われ、松本盛雄氏は自身の東北三省での勤務の経験を踏まえながら、「日中の都市交流は、長年の交流を経て、お互いに厚い信頼の基礎ができている。今後は、いかに実質的な利益を求めていくかが課題だ」としました。しかし「実質的な利益を得たい場合に、必ずしも両国の思惑が一致していないことが多い」「都市により状況、環境は違うのだから、何が一番必要かを追求して求めることが大事だ」と述べ、「都市と都市との協調が必要であり、お互いに協力しながら補完的に発展していこうという動きは歓迎すべき」としました。そして度々話題になった中小企業の誘致についても、「日本も中国も関心を持っているが、お互いの接点が少ない。接点をいかに作っていくかが課題であり、具体的なひとつひとつの接点をを積み重ねていくことが交流の基礎になるのではないか」と述べました。

 最後に香山氏が「各都市が色んな顔を持っていることがわかってもらえたと思う。ぶれることなく本当に有効な地域交流を担えるのが地方都市であり、その意欲が高い人がたくさんいることがわかったのは大きな収穫である」と述べて、本日の討論を締めくくりました。

カテゴリ: 2009年 第5回