. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 第5回 北京-東京フォーラム 分科会 政治対話11月2日速報記事(後半)

政治対話(後半)②

陳健氏:

 1998年から2001年にかけて3年間、私は日本大使を務めました。また日中関係を語れることを幸いに思います。先程の呉先生の話のように、世界のトレンドは非常に重要です。世界の大国としての相互信頼と協力ができることが必要です。
 私は問題点を申し上げたい。日本で体験したことは、歴史問題や靖国参拝は日中関係に大きな障害となったということです。今年の世論調査を見ても、印象の悪い理由として48%が、日本の政治家が両国関係を傷つけることを挙げ、そして50%が靖国参拝を挙げている。逆に日本人は、印象の悪い理由として、「中国が日本の歴史問題を非難するから」を挙げています。歴史問題は重要なもので、最終的な政治的合意は大事ですが、長い目で見ればこういう草の根の感情も大事です。鳩山首相は靖国に行かないと、初めて明言した首相ではないでしょうか。日本国内からも、正しくないというリアクションはなかったと思います。
 日中関係がこのような障害を乗り越えられるのであれば、次のステップはその国との関係です。中日両国が、互いの利害に配慮する。こうした配慮は中ロ関係、中米関係の政治関係の改善に役に立ったのです。日中は相手のコアな利益に配慮すべきです。

 中国の立場は、中国の統一が日本に脅威とならないということ、それは地域に平和と繁栄をもたらすということです。日本の利益のナンバーワンは、おそらく、すでに経済大国なので、政治的に大きな役割を果たすことです。国連安保理入りも目指しています。もし十分な信頼関係ができれば、話し合いののち、配慮したうえで支援することができれば政治的な信頼醸成もできると思います。
 しかしメディアのインタビューでは、中国の軍事力増強について心配をされます。欧米も同じです。しかし心配しないでください。軍事力の強い国ははっきりと示し、弱い国は曖昧にする。どちらがいいのか、何をもって透明なのかということが問題であるというのなら、今回のパレードですべてを明らかにしました。誰かを傷つける気はありません。
 近代化の目標も注目されていますが、国の領土、主権統一、国の平和を守り、エネルギーの輸送路の安全の確保も必要です。それが他国の脅威になるでしょうか。日本もシーレーンの安全を確保しなくてはいけない。すると中国の軍事力増強は日本にとってチャンスではないでしょうか。軍事力増強について、両国民が心配しています。しかしこの問題は、まさに戦略的な関係をつくるチャンスになると思います。シーレーンの安全でも協力できると思います。
 色々な問題を解決する過程におきまして、苦い経験もあります。日中関係において、歴史問題などは弱まってきておりますが、他の新しい問題が出てくるかもしれません。それを見出すのが今回のフォーラムの目的でもあります。

松本氏:

 日本の今年の政権交代ですが、日本における変化について新聞に書いたことがあります。国内的には国内主導で、国外的には日米を推進することよりは、アジアを中心とした視点が変わってくると書きました。評論家、歴史家としての意見ですが、様々な方面で影響力があると思います。

笹木氏:

 中国に一番最初に来たのは学生のころでした。大連にも訪れました。今振り返って、中国に行く30年ほど前ですが、大学を出たあと、松下政経塾にいました。そこで松下幸之助さんが、21世紀にはアジアの経済発展が最も盛んになるとおっしゃっていました。そして今、まさにその通りになっております。
 そして今後30年の課題として考えられるのは、東アジア共同体を完成することができるかということです。政権交代は、93年にもそのような変化がありましたが、今回が本格的な政権交代となりました。鳩山首相はいま、「人間のための経済」といっていますが、金融の成長は足が速いと言えます。アメリカの金融破たんはそれが招いた結果です。この数字がどれだけ人間の幸福に繋がっていたかという点からも考えなければなりません。
 我々が重視するのは、まずは介護問題です。高齢化が進み、高齢者を見る人材が減っており、それに対する雇用対策が打ち出されました。もうひとつは森林対策です。日本は森林を無視してきたので、災害が多発しました。両方ともこれまで力を入れていませんでしたが、直接我々の生命、安全に関わる問題であり、そこに力を入れて対策を立てております。
 環境問題が今後アジア共同体の発展に大きく関わってきます。環境産業というのは今後は間違いなく重要な役割を果たすようになると思います。いずれにしても、日本の新しい政党が、20年30年をかけて長い目でアジア共同体を完成ていくことでしょう。
 「和解」という言葉は中国の隋の時代から生まれ、聖徳太子も使っておりました。新しい産業とプロジェクトがアジアの中で循環し、相互の利益に繋がる産業に環境産業があると思っています。

松本氏:

 日本には基本的に「革命」という言葉はありません。日本はいま第3の開国の時期にあり、日本のような島国、海に守られている国では、これは「維新」と言われます。これは中国の『史記』の中で使われますが、それ以外では使われていないと私は意識しております。「維新」とは本質を変えないで外側をきれいにするというもので、日本では明治時代に「明治維新」をやり、民主党は平成維新をやろうとしているのです。中国のような易姓革命を起こしたくないから、日本の天皇は姓をもっていない。革命的なことをやっても維新なんです。

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