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2日目:政治対話(全体会議内)

 

 全体会議では続いて、分科会「政治対話」の前半の議論が始まりました。この分科会は「平和友好条約30年とアジアの未来」をテーマとし、松本健一氏(麗澤大学教授)と周牧之氏(東京経済大学教授)を司会として展開される議論です。日本側の参加者は岡田克也氏(民主党副代表、衆議院議員)、塩崎恭久氏(衆議院議員)、加藤紘一氏(自民党元幹事長、衆議院議員)、そして中国側の参加者は李肇星氏(全人代外事委員会主任委員、前中国国務院外交部部長)、趙啓正氏(全国政治強商会議外事委員会主任)、陳昊蘇氏(中国大概友好協会会長)です。

 まず、松本健一氏の司会で、次のような発言が順次行われました。

2日目政治対話全体会議内松本: 東京オリンピックから北京オリンピックまで44年の隔たりがある。この44年とは何か。日本の近代化が始まった明治維新から44年後に中華民国が誕生した。日本は東京オリンピックで国民的一体感を達成したあと、緊張がほぐれ、公害が顕著となり、経済停滞も訪れたが、そのような事態は必ず起こるものであり、それをその後の高度経済成長につなげていった。オリンピックのあとに一時的な停滞はあっても、それはその後の発展や誇りにつながるものだ。

加藤: パラレンピックの開催式にも出席して、そこにすさまじい組織力と、オリンピックと同等の経費、時間をかけた国家の意思を強く感じた。国家が意思を持って一体感をもってやり遂げる。その勢いはGDPでは測れないものなのではないか。そこに多くの日本人がある種の脅威を感じるのだろう。東京オリンピックのときには日本に同様の高揚感があった。日本は国家としての若さを忘れ、中年になっている。もう一度新たな目標を持ちうるのではないかと、日本のリーダーも一般国民も経済界も感じたと思う。

 リーマンブラザーズが破綻し、負債54兆円と聞くが、世界経済はかなりの衝撃を受けることになる。アメリカはそう簡単に借金できなくなり、そのときに日本と中国はどうするのか。事態はそれほど甘いものだとは思わない。胡錦濤さんに、アメリカの金融破綻やドルの信認低下のことなどを質問すると、日本やアメリカとしっかりと議論する用意があると言っていた。そこでは、日米がしっかりと対話できるようになるかどうかが問われている。それは今後1年の最大のテーマだろう。アジアの中の日中、世界の中の日中が試されると思う。

 中国のこれからは、社会主義経済の中での官僚経済、官が治める時代から、改革開放後は人の関係で経済が動く時代になっており、透明な社会になるために法治国家になって近代化することが課題である。官→人間関係→法へと、早く変化して欲しい。

 そして、グローバリゼーションがアジアにとって本当に正しいのか、それを日中で話し合う、そのような関係を創りたい。

: 2008年は中日関係にいろいろな事がある年になる。四川地震に際しての日本の援助は、中国人には大きな感動を与えた。福田政権の下で、様々な新しい友好の場面があった。これらの進展は多くの困難を乗りこえたうえでのことであった。

 今回の日中共同世論調査では、日本に対して好感度の高い中国人が多くなっている。これに対して、日本側は逆の結果になっているが、悲観してはいけない。双方とも一緒によくなることは難しい。中日間の交流が民間ベースではまだ不十分だということを物語る調査結果である。

 中国では、日本の首相が変わるときの関心は高いが、アメリカの選挙は中国では議論になっていない。大統領になる人に対中政策に大きな差はないとみられている。

 日本の首相候補者が中国に対してどのようなメッセージを伝えるか、これを非常に重要視している。中国の一般の民衆は、このフォーラムに来ている人たちとは違う。ここにいる人たちは、どんな時代になっても関係が逆行することはない。そこには認識の差があるということを言っておきたい。昨年のこのフォーラムで、宮本大使は、日本が戦後平和国家・民主国家として成長したことを理解してほしいと述べたが、それは日本の人たちの真摯な気持だと思う。日本の国民にも中国のことをもっと知ってほしい。

 中国は今、岐路に立っており、そこに不安や懸念を抱く議論が台頭しがちだが、中国は未だ真の意味での大国ではなく、調和の取れた国内社会をこれから作ろうとしていることをみてほしい。

岡田: 2点申し上げる。

 第一に、小泉外交5年間をどう総括するかを今考えないければならない。日本が今存在感を国際社会の中でなくしている根源はこの5年間にある。一つは日米同盟重視。アメリカのやっている通りやればそれでいいというのは破綻している。アメリカが政策を大転換したらどうするのかについて、答えはなかった。この5年間で、どれだけ日中関係の改善があったのかと思わざるを得ない。その総括の上に、これからの日中関係を構築していかなければならない。

 第二に、安倍政権下で日中関係は正常化したといっても、両国関係はリーダーによってぶれることがありうる。相手国に対して厳しく出ると人気が出ると言うことがある限り、それに乗じるリーダーがいるだろう。重要なのは、もはや具体論が問われる時代だということだ。餃子問題なぜこんなにも時間がかかっているのか。一つ一つの問題をきちんと解決していくことが必要だ。地球温暖化の問題も、中国だけにとどまるのではなく、具体的にその影響が日本にも出てきており、責任あるプレイヤーとして対処してもらいたい。単なる日中友好という言葉だけでは満足できない時代になっている。

 いろいろな問題があっても最後に大事なのは、草の根の友好関係である。日中の間には重層的な交流関係ができていない。国民レベルでの交流が必要だ。このフォーラムもきわめて重要な機会だと思っている。

: 44年前は東京五輪、20年前はソウル五輪だった。そして今回は北京と、アジアでオリンピックが行われたことは、アジアの文明の復興を象徴するものだ。アジアは世界に独自の貢献をする。最初の貢献は日本、次は韓国、そして中国は3番目の貢献をする。日本の選手が二カ国の国旗を持ってきた。皆さんが中国の国旗を持って登場したことに感動した。選手の方々が中国に対する友情を見せてくれた。それは、国家の指導者が語り合うよりも大きな影響力があると思う。世論調査で、中国人の日本に対するイメージは好転し、よい方向に向かっている。それは中国国民が最近の様々な動きに感動した結果である。

 我々がこのフォーラムで3年関してきた努力は無駄にならなかった。よくないことが起きても、メディアが煽り立てることがないようにすべきだ。今の中日関係が逆転しないようにすることが重要だ。互いの相互信頼を大切にすべきだ。

 中国と日本は、東アジア地域にある大国として世界に大きな影響を与えている。アジアの歴史の中で二つの大国が並存するのはこれまでなかったことだ。ともに存在する局面にどう対応するのか。中国はアジアにおいて覇権を持とうとすることはない。超大国への道は選ばない。自分のスタイルをもって相手を変えようとしてはならない。心に残された傷は癒すべきだ。面倒な問題をしっかりと処理し、新たな衝突を起こさないようにすることが重要だ。

 覇権主義という考え方を完全に捨て、中日両国は相互に尊重し平和共存するお手本になる。それが、両国の共通の未来を築くのであり、その責任を負っている。両国は東洋文明の体系の中にあり、非常に多くの共通点があるが違いもある。両国はそれぞれの長所を相互に学習してきた。21世紀は東洋文明復興の世紀であり、双方が努力すれば1プラス1が2ではなく3になる。

塩崎: 中国はオリンピックの成功にさらに自信をつけてもっと飛躍していくのではないか。チャレンジすれば大きな力をつけるのが世の常だ。

 歴史問題の総括と言われるが、それは戦後の60年も含む歴史であるべきで、戦争までの歴史ではない。そこも含めて考えてほしい。「世界の中の日中関係」という新たな考え方でステップアップしていくべき局面にある。私はかつて外務副大臣として高校生の日中間の交流を進めたが、お互いがお互いのハラの中をある程度分かり合っている関係が重要だ。

 経済の問題について述べると、スタグフレーションの理由は二つあり、一つはアメリカ経済のスローダウン、もう一つは中国の経済発展だ。それが物価上昇につながっている。しかし、中国が発展することなく世界の経済発展はない。世界経済の成長モデルのあり方がここ1年で変化している。日本としても中国が発展してもらわなければならない。中国経済そのものが大丈夫なのか、中国のバブルの崩壊は大丈夫なのかが懸念される。中国には持続的に発展してもらう必要がある。日中双方とも、国内にも、世界に向かってもリーダーシップを発揮しなければならない。

 グローバリゼーションの負の効果が指摘されているが、それがポピュリズムと結びついてはならない。ポピュリズムとどう対峙し、どう答えを出していくかが問われている。そのためには、①保護主義にならない、②安いドルにならない、③孤立主義に陥らないことが大事だ。グローバリゼーションが正しいのかは、価値観の問題ではない。それをどうマネージしてプラスのほうの評価をしていくかが重要だ。

 気候変動問題とは、世界経済発展モデルをどうチェンジするかという問題でもある。二酸化炭素排出量第一位の中国に対して、日本は技術移転をしていかなければならないが、仕組みとしては、ODAの中に特別円借款を設け、中国も一つの対象とすることや、オイルファシリティを設け、日中両国の外貨準備を活用し、気候変動対策に資金供給することなどを提案したい。

: 中日関係は顕著に改善した。戦略的互恵関係を構築することが相互の合意で確認された。政治は舵になり、経済、文化交流はそのエネルギーになる。第一に、相互信頼は健全な発展の礎であり、土台である。「信は万物の元」だ。第二に、長期的に友好的に交流していくことが両国の唯一の道だ。和をもって協調する必要がある。第三に、Winwinだ。省エネ、環境保全、震災後の復興など、協力関係を強化していく。これらを基本に、中日両国はアジアに足を置きながら世界を見すえ、ともに世界的な課題にチャレンジしていくべきである。

 以上の発言のあと、司会が周氏に交代し、会場からの質問に答える形で、青少年交流について議論されましたが、続きは午後、東京大学に場所を移して議論が継続されることになりました。

親カテゴリ: 2008年 第4回
カテゴリ: 発言録